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罪深き義母のよがり啼き 39

 彼女の存在などどうでもいい。
 心に出来たその波紋が大きな波にならないようにと願うばかり。
 拍車をかけて、省吾が来るとなると落ち着かない。
 関係を持って、初めて光輝や幸作の前で顔を合わせるのだ。
 光輝は当日も誘って来たが、秀美は「おつまみ作っておいてあげるから二人で行っておいでよ」と断った。
 告げておいた通りに、秀美は幸作との夕食後にもう一度台所に立って唐揚げを揚げた。ついでにとスライスしたトマトを冷やしておく。
 台所を終えて今月から始まったドラマを観ていると、入浴を済ませた幸作が下着一枚でエアコンの前に立った。
「出たよぉ。あっつい、あっつい……あー、光輝たちのことは気にしないでいいから。適当にするだろうし」
「うん。お風呂に入って私も寝るよ。あ、なんか観る?」
 首を振る幸作を見てテレビを消してから、浴室に向かう。
 今日はジャスミンの香りか。
 隅のゴミ箱から見えた入浴剤のパッケージを眺めて、服を脱いだ。
 ふー。
 甘い香りが全身を包む。湯船に浸かると、外から男性の話し声が聞こえ始めた。
 こんな時間に珍しい。
 光輝たちか、でなければ同じように花火大会に行って、混雑する電車に揺られて帰って来た人たちかも知れない。
 このまますぐに寝室に向かえば、光輝の前で省吾と顔を合わせることはない。
 秀美は湯船から出て頭に湯をかけた。

「義母さん、ただいま」
 ビクッとするほど驚いた。
 光輝だ。見ればすりガラスの向こうに立っている。
 わざわざ入浴中に声をかけて来ることなど今までなかったのに。
 開けることなど無いだろうが、つい胸を隠した。
「お帰りなさい……あっ、唐揚げ揚げておいたから良かったら摘まんで」
「見た見た。ありがとう。あ、ご飯ある?混んでてさぁ、何も食えなかった」
「そうなの?あるけど、冷蔵庫……すぐに出るね。冷蔵庫にトマトも入ってる」
「サンキュ、ごめん。ビール飲んでいるから急がなくていいよ」
「うーん」
 返事をしてシャンプーを手に取った。
 省吾もいるのかと訊きたかったが訊けなかった。
 出ればどうせ分かる。
 いたらいたで、平気。省吾だってまさか自分から友情にヒビが入るようなことはしないだろう。
 秀美はシャワーをかぶり、手早く入浴を終えた。

 会うのを避けていた割には、替えに用意をしておいたのはパジャマではなく普段の家着だ。
 秀美は汗が噴き出すのも構わずに、急いでそれらを着てリビングに向かった。
 やはり省吾もいる。夫はすでに二階のようだ。
「お邪魔してます」
 省吾は顎を落とすようにして頭を下げる。
「ごめんね。何時になるか分からなかったから、お風呂に入っちゃって」
 秀美は椅子に向かい合って座る省吾、光輝を順に見て、冷蔵庫を開けた。
「ビールどれくらい飲む?冷やしておくけど」
 ご飯の入っているタッパを取り出してレンジに入れる。
 すると、光輝は立ち上がりながら言った。
「俺、風呂入ってくるよ。省吾だって入るだろ?てきとーに服出しておくから」
「うん。わりー」
「あ、じゃあ、ご飯は……なんならチャーハン作っておこうか?キムチ買ったの。キムチチャーハン……どう?」
「えーいいの?すっげー嬉しい……って言いたいけど、いいよ。風呂入ったんだし、省吾の相手しててよ」
「でも……」
「いいからいいから」
 光輝はご機嫌とも取れる口調でリビングを出て行った。



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