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罪深き義母のよがり啼き 31

 その電話から十日ほど経つが、幸作は何も言わない。
 生理もあって、マッサージの催促もなかった。
 したいのかしたくないのか。
 そう突き詰めるととんでもない答えを出しそうな自分がいる。語弊を招きそうだが、それを教えたのは柳沢からの電話だ。
 でも、だからきっとこんな状態に陥ってしまった。
 秀美にはなす術がなかった。

「ふむ」
 パート仲間に教えてもらったようにトマト缶を加えてみた。
 二人は気に入ってくれるかな。
 秀美はシーフードカレーの味見をしてから、取り込んで投げておいた洗濯物を畳もうと二階に上がった。
 一通り畳み終えて、光輝の物を部屋の前に置いてから、タオルだけを持って下りた。洗面所の棚にタオルを入れていると、音がした。玄関が開く音だ。
「お帰りなさい」
 顔をだしても姿はない。階段を上る音と「ただいま」の光輝の声がした。
 秀美は階段に向かいつつ明るさに努めて投げかける。
「あー、ねぇー、夕飯は?トマト風味のシーフードカレー作ったのぉ」
「父さんが帰ってきたら」
「分かったぁ」
 応えて階段を見上げたが光輝の姿は見えなかった。
 すぐにドアの開閉の音がする。
 秀美は静かに深い息を吐きながら肩を落とした。
 あれからずっとこう。
 休みの日でも以前のように買い物に付き合わなくなり、それどころか、二人だけで話すこともなくなった。
 まるで一緒に住み始めた当初のよう。
 二年ほどの楽しかった時間は幻だったのかとすら思える。
 大事な人と言ってくれたのに……。
 過剰な反応に嫌気を差されたのだと考えると悔やむしかない。
 だったらどうすれば良かった?
 あの時、もーおー、ふざけないで、と茶化すように言うことが出来たなら違っていたのか。足をなぞられた時もそれくらいで動揺を見せずに澄ましてやり返すぐらいのことが出来たなら。
 そうしたら、今までのように、男根を握らされても直後の夕食を共に出来たように、少しだけ互いに気を使う良好な関係を維持できたのか。
 意味のない仮定に相俟って、もしかしたらと不安も込み上げる。
 省吾から何かを聞いたのかも知れない。
 近藤とのことを疑うなにかを。それだけは声を大にして否定したい。
 仮にそうでなくても、省吾なら光輝の最近の様子をきっと説明できる。
 秀美は仕事が休みの明後日に、またあのコーヒーショップに行ってみることにした。

 されど、相手は大学生。
 近藤との待ち合わせの時には、夕方の時間にはいたが講義の都合もあるだろう。あの日と曜日も違う。
 そして、その予感は的中した。
 コーヒーを一杯飲んでも省吾は見当たらない。
 二杯目を頼むときに、知人であることを前面に押し出して訊いてみた。
 すると、今日はシフトに入っていないと同じ大学生のような女性は言う。
 どうしよう。
 コーヒーを飲み終わるまで考えたが、恥を忍ぶようにしてここまで来たのだ。
 秀美は携帯に記されたあの番号にかけてみた。
 そう言えば、どうやって自分の番号を知ったのだろう。
 コールを聴きながらふと思う。
 それに勝手に断定していたが違っていたら。
 やっぱりと切ろうとした時に規則的なコールが途切れ、真空のような一秒が流れた。
 無意識に身構える。

「はい」
「あ、あの……」
「秀美さん……秀美さんでしょ?」
「省吾君?」
「うん……そうだよ」
 耳孔に響く甘えるような声は、繋がった安堵とは全く異なる熱を躰に生んでいた。


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