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罪深き義母のよがり啼き 18

「地下のレストランバーなんだ。あ、言って置くけど、前に使ったのは仕事でだから、ご心配なく」
 柳沢はホテルに入るなりおどけるように告げて、エレベーターをさりげなく教えた。
 浮気、と疑うかと思ったのかも知れないがそんな余計な思考は今の秀美にはない。
「秀美ちゃんってお酒強い?飲まない印象があるけど」
「え?あー、うーん、ビールぐらいならですね。前に食事した時もそうだったかな」
「たまにはさ、デートとかせっついた方がいいよ。鮎川きっと張り切って探すから」
「はい」
 秀美ははにかんで頷いた。
 そして思い出した。光輝の夕飯だ。すっかり忘れていた。
「あ、光輝君のご飯」
「あー、鮎川が電話したと思うよ。デートだからって」
「そうですか?それならいいけど……」
 エレベーターのドアが開くと店先に立つ幸作が見えた。
 幸作もきっとまだかまだかと待っていたのだ。秀美を見た途端に知っている笑みを見せた。
「幸作さん」
 歩みを速めてしまうほどに安堵が拡がる。けれども、急なことで文句は言いたい。
「どうして急に決めちゃうの」
「ごめん」
 幸作は秀美の手を取った。
「出来ることを早く確かめたくてさ」
「ねぇ、光輝君は?」
「したよ、メール」
「なんだって?」
「なにって、ごゆっくりだって」
「だったら、いいけど」
 応えながら手の熱さを感じた。体調の悪さではなく、興奮してくれている。
 そう思うと嬉しくて、それでいて、本当に実行されることを痛感する。

「何、食べようか?」
 秀美の横に座った幸作がメニューを見せながら訊いてくる。
「食欲無いよ」
 秀美が応えると次は柳沢だ。
「柳沢は?」
「まぁ、正直に言えば俺も。時間がかからないものを適当に頼んで、ビールで乾杯だけしようか」
「そうだな」
 幸作は店員に店のおススメビールを三つとチーズの盛り合わせを頼んだ。
 柳沢にも抱く女性の夫を目の前にした緊張が窺える。友人であるからなおのことなのかも知れない。さっきまでの饒舌さが姿を消して、乾杯後のビールを瞬く間に飲んだ。
 秀美がスモークチーズをひとかじりして洩らした「おいしい」と幸作の「おかわりは?」が重なった。
「いや、いいよ」
 柳沢は断って、秀美と同様にチーズを摘まんだ。
 店内のざわめきなど無視した三人だけの静寂な世界。
 これでは、緊張を通り越して、罪悪感と不安だけが強くなりそうだ。
 せっかく本当の夫婦になれる可能性への門出なのに。協力してもらう柳沢にも申し訳ない。
 秀美は二人の様子を盗み見てから、明るさに努めて幸作に問う。
「あ、ねぇ。お部屋はとったの?」
「うん、さっき。柳沢から電話が無いから秀美も来るんだなって思って。チェックインはしてあるよ」
「だったら、移ろうか?なんか緊張ばっかりして頭が働かないの」
「そうだな」
 幸作が応えると、柳沢は伝票を持った。

 支払いの間、秀美と幸作は先に店の外に出た。
 秀美は鞄を前に持ち、モジモジとするように躰を小さく揺すりながら幸作を見る。
「幸作さんの活躍聞いちゃった。柳沢さんから」
「活躍?活躍ってなんだ?」
「んー、高評価って言うこと。良かったね、ブランク無くお仕事出来て」  
「それはさぁ、秀美がいてくれるから」
「んふっ」
 と秀美が笑ったところで柳沢が店から出てきた。

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