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罪深き義母のよがり啼き 14

 んっ。
 秀美は鞄を抱いている手に力を込める。怖い。
 背後の者からも、肩を竦めて怯えているのは丸分かりらしい。その指はまるでその一点で秀美を持ち上げるように、同じ動きを繰り返した。
 誰かに助けて欲しい。けれども、そんな目に合っていると、気が付かれたくない。こんなに大勢の人たちに知られたくない。いい年をした女が。
 秀美は奥歯を噛み締めて、その時をやり過ごした。
 ドアが開き、人が流れる。秀美は、やっととばかりに人に紛れて電車を降りた。後ろを振り向きたいが出来ない。
 どんな気持ちで自分を見ているのかと思うと腹が立つ。それとも、すでに次の女性を探しているのか。
 秀美は何事もなかったようにホームを歩いて、階段を上った。
 
 すると、鞄の中の携帯が震えた。
 仕事よりも光輝の顔が浮かんで階段を上りながら鞄を漁った。
 え?
 相手は非通知だ。
 光輝の名でも幸作の名でも、職場の誰かでもない。
「はい」
 秀美が出る。
「ねぇ、感じた?」
 突然、聞こえたのは奇妙さしか教えない甲高い声。
 ニュースなどの匿名で聞くようなボイスチェンジャーを使った声だ。
「え?」
「明日はさぁ、スカート穿いてきなよ。もっといいことしてあげるから」
 そう言い残して切れた。
 なに? だれ?
 秀美は階段を上りきって、足を止めた。
 番号を知っている誰かがこんな卑劣なことをやった。
 今の辱めは電話の相手だ。
 こんなことをする相手に見当が付かない。
 昨日の今日で近藤を思い浮かべるが、近藤はこんなことをする男ではない。

「あー、秀美ちゃん」
「え? あっ」
 ハッとして前を見ると、手を振っているのは反対側の階段を上って来たパート仲間だ。
「おはよう」
「おっはよう。どうしたの? 立ち止まって変な顔してたよ」
「あ、ううん。間違い電話みたいで、ビックリしただけ」
 秀美は、携帯を鞄に落としながら微笑んだ。
「あー、たまにあるよねぇ。あたしんとこなんて、『例のブツが』なんて留守電があったよ」
「それは怖い」
 会話をしながら改札を出たところでさらなるパート仲間が加わり、少しだけ気が和んだ。
 それでも、誰かが私の過去を知っている……今になって……。
 そんな不安は消えなかった。
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