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第三章 群青の支配 2

 そうとわかれば、形が男性器だと気が付く。
「結構重いんだよ。我慢できるか心配」
 隆一君は、私に持たせた。
 確かに重みがある。これをずっと?その場所にずっと。
 生唾を呑んでいた。自分が着けられたような感覚を覚える。秘めた口に力が入った。最近では忘れていた女性器が存在を知らしめる。
「どうしよう。俺、それなりに女いるんだけど、麗香さんだけになっちゃうね。シリコン製の軽いものもあったけど、これにしてよかった……どうする?着けてくれる?」
「だって、着けて欲しいでしょ?私に」
 隆一君を見上げて言うと、隆一君の瞳が揺れた。動揺が見えた。沈黙。速まる鼓動を見せつけられたような気がした。でも、私には不思議と焦りがない。
 隆一君は口を開いた。切なげに顔を歪める。
「ああ、着けて……着けてよ、麗香さん」
 隆一君の言い方に身が震えた。それだけじゃない。熱くなった。私の秘めた口が。もうずっと忘れていた女の悦びが舐めるように舌を伸ばしていた。ああ、女の蜜が溢れてきている。
「いいけど、どうやって?服を着たままでは無理でしょ?」
「ぬ、脱ぐよ。今脱ぐから」
 隆一君は、おもむろにジャケットを脱いだ。ベッドに投げながらシャツを脱いで、ズボンを脱いで。裸になる必要がないと言えばないけれど、裸になることが自然に思えたからそのまま見続けた。
 
 ぐっ。
 よりによって、喉が鳴った。隆一君が左右に手をかけて、最後の下着を下ろしたから。
 一瞬見えたそそり立つ勃起が隆一君の背中に消される。けれども、それもつかの間で、隆一君が下着を足首から抜いてベッドに投げると現れた。
 目を奪われるのはみっともない。けれども、凝視してしまった。凶暴なほどに大きくなっている男性器を見るのは久しいから。
「見ないでよ、そんなに」
 隆一君は、両手で股間を隠した。
「え?あ、ごめんなさい」
 私は、目を逸らせた。ハッキリと言われて、情けなく思う。
「こんなんじゃ、着けられないから、少し待ってくれる?」
「あ、うん。そうね。そうする……」
 待ってと言われて何をすればいいのか。手の中の貞操帯を見つめると、隆一君はベッドに腰掛けた。
「俺さ、本当は医学部出ているの」
「医学部?医者なの?」
「ならなかったよ。できそこないだから」
「そんなことはないでしょう。会社を作ったんだから」
「親父が医者でさ、仕方なく入ったけど、俺には無理って思ってやめたんだ」
「そうなの……」
 ふと考えた。謝る為に頭を幾度も下げる彼と後半の饒舌な彼。そのくせ、タクシーの中でのように押し黙る時もある。どれが本当の隆一君だろう。
「来て、もう平気だよ。麗香さんのご主人のことを考えたら、小さくなった。俺、全然ダメかなって思えて」
「そんなことないわよ。それよりも、着けるの何回目?」
「初めてだよ」
「初めて?」
 跳ねた声が出た。それぐらいに驚いた。責任重大じゃない。こんな器具を着けたまま、仕事をしたり、眠るのでしょう。
「いつ会える?不安だから、あんまり空けたくないんだけど」
「あ、明後日とか……」
 咄嗟に出たセリフに隆一君は、わかりやすいほどに目を輝かせた。
「明後日?土曜だよ」
「でも、その日だけは平気なの。普段の土曜日はダメだけど」
 光莉は学校があって、貞明さんはその光莉を送ってから仕事で夕方は医師会の会合と言っていたから。
「良かった。じゃあ」
 と、隆一君は膝を開いた。先ほどとは比べ物にならない性器がプルンとある。私は手に持っているステンレスの筒を強く握り締めていた。
「夢のようだな。麗香さんみたいな人に着けてもらえるなんて。また逢えるなんてさ」
「あ、あ、うん」
 私は手の平の上にその形を見てから、いま一度ステンレスの男性器を握り締めた。


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