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第二章 未知の世界 2

 娘の有名私立中学への進学は私の環境も変えた。
 それがこのランチ会。月に一度必ず行われる。
 小学校の時にも、役員絡みで親しくなったママ友とのランチ会は何度かあったけれどもとても気を使った。
 なんと言うか、まったく楽しくなかった。偶々なのかも知れないけれど、気軽にイベントに誘える友人は出来なかったし。
 けれども、今は違う。
 食べたい物を言えて、着たい服を着て、したいお洒落をしても浮かない。それこそ、ブランドの内覧会やエステのトライアルにだって気兼ねなく誘える。院長である父経由で招待されたレストランやホテルのプレオープンにだって。
 やはりここでも、娘の環境を変えてさらには私の環境までも変えてくれた貞明さんに私は感謝している。
 それだけではない。もっと悦ばしいことが起きた。
 娘の私立中学への進学のおかげで同級生だった友人とも再会が出来たの。
 それが、朱美。朱美とは、今の光莉と同じころに初めて言葉を交わした時から意思疎通が出来た。聞けば父親が医師と言う。祖父も曾祖父も。私と同じ医師家系。それでいて、女である自分には期待されていないという点も共通していた。だからね、と当時は互いに笑い合いながら納得をした。
 朱美の渡米で一時は疎遠になってしまいはしたけれど、思いがけない再会。私は嬉しくなった。その勢いで、去年の入学式直後にこのランチ会を朱美と作った。 

 受付で名を告げると個室に案内された。チャージがかかってもその方が落ち着く。
「あ、やっと来ましたね。遅いですよ、お三人」
 と、艶やかな朱美。
 他にもすでに三人の女性が集まっている。けれども……。
 私たち三人は、空いている席に座った。
 テーブルは長方形で八人掛け。
 私の横には金子さん。正面は誰もいない。七人のメンバーであるから仕方がないのだけれど、そんなことよりも朱美の横と前。あそこのどちらかはいつも私の席だった。
 私が朱美と作った会だと言うことをみんなが暗黙で知っていたから。
 気にしたら仕方がないけれど、しかも今日の私は最たる下座。食事が取りに行きやすいということはあるけれど、こんな状況はなんだか納得できない。
 どうして?どうして私がここ?
 店員が店内の説明だか何かを話しているけれど、釈然としない想いで私は上の空だった。
「じゃあ……乾杯ね。さっきのでいいでしょ?上島さん」
 朱美は、横に座る上島さんに聞いた。上島さんは、微笑む。
「そうね……では、お願いします」
 上島さんが小さく会釈をすると、私の後ろに立っていた店員がシャンパンを注ぎはじめた。二人で決めたものらしい。
 「はい、今日もお集まりいただけて嬉しいです。みなさんは今日もお美しい。永遠の美を誓って乾杯」
 いつもの通りに朱美の音頭でシャンパンに口を付けた。良く冷えていておいしい。
 そんな感想を心の中で洩らすと、ずっと斜め前にいる朱美と目が合った。
 朱美は、微笑む。
 私も微笑む。
 そっか。今日はたまたま。そうよね、たまにはこんな席順だっていい。
「ねぇ、お料理……」
 気を取り直して話しかけると、朱美は上島さんに耳を寄せた。何かを言われたらしい。朱美は笑う。そして、上島さんとその笑顔のまま話し出す。
 私は、自分を繕うために横でシャンパングラスをとっくに空にしている金子さんに言い直した。
「ねぇ、お料理。すきっ腹では酔っちゃうでしょ」
「そうね。でも、このシャンパンおいしいわ。もう一杯、後で頂いちゃおうかしら」
 金子さんは、舌なめずりをした。
 金子さんの癖だ。そして、私は嫌い。
 卑しい女。せっかくの上品さもその癖だけで、見せかけだとわかる。偽物。イミテーション。その胸元の大きなダイヤだって……。
 私は、席を立って個室を出た。
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