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archive: 2014年08月  1/4

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〈娼婦の唇・典子の章 30〉

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『たまには遊びにおいでよ。おばあちゃんも典ちゃんのことが大好きなんだし』ラーメン屋の近くの駅で別れた時に叔父が言った通りに私は月に二度ほど祖母の家へと通った。長いテーブルがあって、ミシンがあって……。叔父との逢瀬に使っていた部屋にまたミシンの音を響かせるようになっていた。その部屋が今日は白い幕が張られて、花と線香の匂いで埋め尽くされている。大きな祭壇。その中央には少しだけ若い祖母。祖母が亡くなったの...

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序章 ナイトワンスアゲイン

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しばらく晴天が続くと言う予報の六月。金曜の七時前。俺は会社を出て東京駅から新幹線に飛び乗った。向かうは軽井沢。スーツケースを置いて座席に座る。「はぁ……」なにに対してか、ため息が出る。ああ、きっとやりきれなさだ。売店で買った缶ビールを一口飲んでから暗闇に映る自分の顔を眺めた。とうとうあの二人は結婚か。緑の中のチャペルで純白に包まれる二人はどれほどに美しいのだろう。……ふんっ。まーたく興味はないけど。俺...

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第一章 蕩けるヴァニラ 1

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高層マンションの二十二階。三十帖ある部屋はフレンチバニラの甘く官能的な香りが漂い、柔らかなオレンジの灯りに照らされていた。照明はブラウンカラーの大理石の玄関から同じ色の廊下、廊下沿いの一つの部屋を含めたすべてが落とされている。暗くないのはカウンターと部屋中央のテーブルでアロマキャンドルが静かに焚かれているから。南と西に望めるはずの素晴らしい夜景は大きなシェードで遮られて、余計な音すらもしない……濡れ...

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〈娼婦の唇・典子の章 31〉

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これ以上何もなく、このまま卒業出来たらいいのにな。阿部君からのメールを読んだ後で思った。野球部は夏休み二日目に交流戦があった。私はもちろん観に行った。そしてそれを最後に引退。阿部君は予備校に通いだした。私が通っているのは違う塾だけど阿部君が通っている予備校で私も明日模試を受ける。メールはその後のデートの約束のことだった。デートは夏休みに入って二度したけど阿部君は気が抜けたようだった。本当に野球が好...

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〈娼婦の唇・典子の章 32〉

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「おまちぃ」阿部君は両手に麦茶の入ったコップを持って腕にはコンビニの袋をぶら下げてきた。「ゼリーがあった。食べるでしょ?」「うん」「ミカンとメロンどっちがいい」「んー、ミカン」「はいよ」スプーンとゼリーを渡された。私はフローリングにお尻をついて蓋を開けた。「ベッド座っていいよ」机の前の椅子に座った阿部君は言う。「ううん。汚したらまずいから」私はフローリングに座ったまま「おいしい」とミカンゼリーを食...

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〈娼婦の唇・典子の章 33〉

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それから阿部君からメールが三通来た。どうして?他に好きな人が出来たの?そんな内容の文面だった。だけど私は返さなかった。卑怯だな。ずるい、弱い。こんなことで終わりになるなら、普通の時に終わりにしたいって言えば良かった。したいって阿部君に言わせまでして、別れたいなんて。それから三日後に私は最も親しい友人にだけ阿部君と別れたことを塾の帰りに伝えた。理由を根掘り葉掘り訊かれた。「なんでぇ、お似合いだったの...

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蕩けるヴァニラ 2

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「こら、ダメじゃないか……今日は美咲から求めたらいけない日だろ。俺が祝う日なんだから」言いつつ男は出されている舌を亀頭で小突いた。さらに両胸でペニスをしごくような揉む動きも加える。女は男の身勝手な行為に更なる興奮を感じた。パックリと開かれ晒されている秘裂は、オイルよりも十分熱のある愛液を生み出している。祝ってもらっているのは間違いないようだ。男は物欲しげな舌を先端で小突いてもそれ以上のことを女にさせ...

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〈娼婦の唇・典子の章 34〉

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う、受かった。光太郎の大学に私、受かった。翌年二月の合否発表の日の夕方……光太郎は当直明けにも拘らずに仕事を終えてから車を飛ばして会いに来てくれた。そして待ちきれないとばかり車の中で私を強く強く抱きしめた。「おめでとう。よく頑張ったよ」「うん」「お祝いしないと」「うん」「それともしたい?」正面切って言われて顔から躰、心まで熱くなった。私を抱きしめる光太郎の手にも力がこもる。「したい……けど今日は親がお...

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〈娼婦の唇・典子の章 35〉

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ほれほれ、見て。私のファンクラブだって。そんな調子で光太郎と会いたかったけど、阿部君との写真は見せたくないな。私はそのことは黙ってファミレスでご飯を食べた後に光太郎の部屋に入った。緊張する。泊まる支度が入っている鞄を部屋の隅に置く。光太郎は暖房をつけて早速とばかりに寝室に入った。も、もう?ダッフルコートを脱ぎながら思っているとすぐに出てきた。手にはブルーのリボンがかかった長細い包み。「ほら、卒業と...

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蕩けるヴァニラ 3

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瞼を上げた美咲に見えたのは精悍な顔の心配そうな表情だ。松永龍慈(まつながりゅうじ)はその表情を悟られないようにとすぐに頬を卑しく歪めた。縄の痕を心配して擦っていた美咲の手首からも手を離した。「良かったか?ぶっ飛んでたぞ」甘い香りは変わらず部屋を埋め尽くしている。それでも美咲は自由になった両手足よりも自分が放った臭いをまず感じた。「出ちゃった?」羞恥の色を含んだ掠れた声だ。松永はオーバーなくらいに片方...

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