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archive: 2013年04月  1/3

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最愛 第一章・夢みる頃 88

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「なあ、小泉どうしたんだ?」僕は茶色い髪が揺れる美乃里の背中に訊いた。「知らない。お腹空き過ぎなんじゃない?」素っ気ない声が戻ってきた。空き過ぎって……来るときマック食ったし。しかも三つ。すると突然の質問だ。「杏と話した?」「あ、ううん……あいつ、手、繋いでた。お前が言ってた通りに付き合うのかも」杏のもっとも親しい友人だと思い、僕はつい話していた。どうせ杏からも聞くだろうし。「そ……」言ったきり美乃里は...

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最愛 第一章・夢みる頃 89

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「電車、何分?」僕は蓋を開けてお茶を飲んだ。早く家に帰りたい。そして、ベッドに突っ伏して本当に杏とさよならをしよう。明日からは友達として、同じ学校の人間として杏におはようって言えるために。駅で会っても、気配を感じても逃げなくていいように。下を向かなくていいように。……そうしよう。「あと……」美乃里は腕時計と時刻表を見比べた。「五分かな……あ、お茶ちょうだい」僕に向き直して手を出した。「ああ?なんだよ、買...

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最愛 第一章・夢みる頃 90

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乗り換えた後の電車の中では二人とも何も話さなかった。僕からしてみれば話せる状態ではなかった。頭の中がめまぐるしく動いている為に下半身に一向に血液が集まらない。僕はまだ迷っていた。美乃里としたらまた杏を傷付けるんじゃないか。杏は僕だけじゃなくて美乃里にも裏切られたことになるんじゃないか。美乃里だけはダメだ。ヌクだけの女は他にいくらでもいる。『やっぱり帰る。じゃなかったら、いつものマックで話をしよう』...

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最愛 第一章・夢みる頃 91

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薄いピンク色のカバーがかかったベッドを見ても格別な興奮はしない。慣れって怖い。壁のコルクボードに写真が何枚も貼ってあった。僕は意識して目を逸らした。しかし本棚の小さな黄色いクマのぬいぐるみには視線が奪われた。途端に僕の心がひるんだ。でもここまで来た。僕は美乃里の部屋にその為に来た。その為だけに来たんだ。黄色いクマを投げる代わりに鞄を投げた。そして「なにか食べ……」と言いながら背中を向けた美乃里の腕を...

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最愛 第一章・夢みる頃 92

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「緑川、そろそろちゃんとしなよ。いつまでも杏に振り回されてちゃダメだよ」美乃里は次々と涙を溜める瞳を迷いなく僕に向けている。僕はそのセリフに体が熱くなった。官能的な興奮とは異質の熱だ。「お前……何言ってるの?」「私、緑川の事好きだよ。ずっと好きだった。だから心配してるの。このままじゃダメになる。緑川、歯医者になるんでしょ?こんなことしてたら、歯医者になんて……」「うるさいっ」僕は唾を飛ばす勢いで怒鳴っ...

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最愛 第一章・夢みる頃 93

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「おはよ」下駄箱でクラスメートに声をかけられた。「ああ、おはよ」僕は下駄箱から上履きを出しながら応えた。杏と同じ電車になるかと思っていたがならなかった。せっかく声をかけようとしていたのに。朝ごはんが食べられないくらい緊張しても声をかけたかったのに。ああっ、腹減った。弁当食っちゃおうかな。上履きに片足を入れたところで急に肩を掴まれた。「なぁ、昨日ゴリの家に行ったの?」小泉の声だ。「あ……うん」振り向い...

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最愛 第一章・夢みる頃 94

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杏は小泉に引っ張られる様に歩いていたが僕を振り返らなかった。僕は二人の背中が見えなくなったところで周りが騒然としていたことに気が付いた。「大丈夫?」「大丈夫かよ、血出てるぞ、口。保健室行けよ」「あ、あたしが連れて行く」そんな雑音が聞こえたが僕は投げた鞄を持って蹴られた場所の汚れを取りながら教室に向かった。今まで通りって、なんだよあいつ。杏と……杏と手まで繋ぎやがって。ズキズキと唸りながら血を噴き出す...

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最愛 第一章・夢みる頃 95

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「あ……ゴリ」僕は席を立って美乃里に近づこうとしたが美乃里は僕に気が付きながらも別のクラスメートに「おはよ」と言った。僕はその様子からなんとなく席に座り直した。謝る機会を失くした。そんなことは関係なくいつものように淡々と授業は進む。僕はノートをとりながら思っていた。このまま……このまま僕たちはバラバラになるのかな?高校生活だってあと少ししかないのに。ろくな話もしないで、小泉ともこのまま……。小泉が杏を好...

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最愛 第一章・夢みる頃 96

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部活は小泉も出ていた。部室で小泉の顔を見た途端、蹴られた場所が痛くなった。向こうは僕の顔を見ない。僕も部活中、目を背けた。それでもコート半面を使った3ON3をやれば小泉からパスが回ってくる。やはりそれには苛立ちなんかよりも安心を感じた。目に見えない信頼を感じた。いつもの時間を過ごして「おっさき」と部室を出た。部活に出ても結局美乃里に謝るタイミングは持てなかった。だが、様子から怪我はしていないようだ。...

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最愛 第一章・夢みる頃 97

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杏は驚いた顔を見せた。理由が声の大きさなのか言葉なのかは分からない。でも僕は立ち止まり、同じ言葉を繰り返した。「俺、そんなこと言ってない。ゴリとしてない」詳細なんてどうでもいい。していない。僕は美乃里としていないし、付き合うなんて絶対ありえない。杏も立ち止まったが「そう」と言うと歩き出した。嘘だったんだ、と嬉しそうにしている様子はない。逆に、すごく哀しそうに見えた。美乃里に嘘を吐かれたからかな。そ...

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