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category: 純愛不倫  1/7

純愛不倫 1

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赤いマフラーが落ちていた。地べたを這う長い長い赤いマフラー。印(シルシ)とも、流れてくる血液とも取れる赤の先を辿ると、前触れもなく教室が現れた。その中には彼女。教壇の机の上に立つ彼女が見えた。何をしてる?言いたいのに声が出ない。突然、マフラーが躰に巻き付いた。解こうとするのに、きつく締まっていく。きつく……きつく……。もがいている最中、彼女は机の上に立ったまま、首元のエンジ色のネクタイに手をかけた。キャ...

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純愛不倫 2

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 あんな夢の後だからだろうか。 欲情? 懺悔?  心にあるのは分らなかったが、一吾は涼子の耳にキスをした。 朝からの行為としては珍しい。 唇に触れるセミロングの髪をそのままに囁いた。「待てない」 やけに粘ついた声だと言うのは自分でも気が付いた。 涼子は、くすぐったいと言いたげに肩を竦めた。「嬉しい。やっぱり、あの効能かな?この前のもかなりの閲覧数があったのよ」 軽やかにさえずってから、宥めるように...

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純愛不倫 3

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 バンドネオンの音が消えると、階段の上から駅員のアナウンスが聴こえた。人もまばらな改札の上の時計は、十一時十五分を示している。 研究会の集まりは午後の一時。四時までの予定である。 食べたばかりでお腹は空いていないけど、念の為におにぎりか何か買って行こうか。 考えながら一吾は、電車内で使っていたイヤホンのコードをクルクルと巻いた。ダッフルコートのポケットの中に落として、反対側のポケットから出した定期...

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純愛不倫 4

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 彼女……。 来栖静佳(くるすしずか)は二年生だ。数学研究会の一員ではあるが、この二年間の一吾の受け持ちは、三年生、一年生の順だったために授業を受け持ったことが無い。 静佳が入会したのは一昨年の暮れ。それでも、存在は同年の五月からあった。一吾が顧問となった文化祭実行委員会の委員として入学したばかりの静佳が現れたからだ。 その時は会話らしい会話をしていない。四十人ほどの実行委員会の中心は三年生であったし...

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純愛不倫 5

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 しかし、戻った足では、誰かを見ることはなかった。トランペットの音が変わらずに遠くに聴こえただけだ。 錯覚だったのか?いや、確かにいた。 そんなことが数多くあっては困るが、翌日、一吾は家を出る時から、もう一度あの時間にあの場所を通ることに決めていた。せめて生徒の名前だけでも把握しておきたいという想いがより強固な意志となっていた。 授業が終わって、実行委員会全体の最後の集まりがある。 全員が入れる場...

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純愛不倫 6

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 マンションの灯りが見えてきた。 一吾はいま一度、街灯の下で立ち止まって、鞄から白い真四角の封筒を出した。 中身は赤いハート型のカード。その裏を読む。『ホワイトデーは六時にあの場所で』 あの場所……静佳が二年になってからの教室だ。 赤いハートを封筒に戻し、丁寧に手帳のポケットに挟んでから鞄の中に入れた。 ホワイトデーって、三月十四日はまだ一か月も先だぞ。 教師としてはあるまじきことを当たり前のように...

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純愛不倫 7

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「いえ、いえ。大歓迎です。涼子がお世話になっています」「こちらこそ。仕事が忙しいのに、えらいですよぉ。涼子さんは」 話しながら沙羅がリビングに向かったので、一吾も後を続いた。 下ろしているのは初めて見るかも知れない。背中の真ん中まであるウェーブがかった髪。妻とは違う匂いがする。 リビングで迎えたのは涼子のいたずらっぽい瞳だ。「どーおー?たまには別の奥さんのお迎えもいいでしょ?しかも、わ、か、いっ」...

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純愛不倫 8

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 間が空いた。 一吾は「そうですね」と先に応えた。 だが、せっかくの華やかな雰囲気が一転したように感じられた。 ご主人のことを訊いては、まずかったのかな? 一吾は言葉が続かないことをグラスを持つことで誤魔化した。 二人の表情を盗み見ると、大きな瞳同士で目配せし合っている。 沙羅はまるで何かの覚悟を決めたように涼子を見ながら小さく頷いてから、一吾に視線を移した。 益々赤くなっている顔を柔らかく崩す。...

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純愛不倫 9

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 念の為と訊いてみた。「どうして、分かったんですか?」「え?」 沙羅は逆に問いかけるように一吾をじっと見る。あまりにも実直な大きな瞳で吸い込まれそうだ。「あ、いや。涼子って」「あっ……あの……」「待ってて、これを観たんだって」 涼子は棚の上に置いてあるパソコンを取る為に立ち上がった。「い、あ、いや、いいよ」 どうして、今ここで観るんだよ。 焦る一吾をよそに涼子はアルゼンチンタンゴの曲を止めて、パソコン...

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純愛不倫 10

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「せっかくだから、私の下着を貸すわね。うーんとエッチなやつ。マスクも選んでね」 涼子が沙羅を浴室に案内した。 その間に一吾は寝室の用意をする。 カメラを据え、四つのライトの調節をしてから、二人だけの空間であるはずの寝室を見渡した。 この場所で他の女性とセックスをする。涼子は平気なのか?これから毎晩そのベッドで眠るんだぞ。シーツを変えるとかそのレベルじゃないだろう。 俺だったら嫌だ。涼子が他の男とな...

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