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category: 秘かなる蜜愛を薫らせて  1/9

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序章 ナイトワンスアゲイン

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しばらく晴天が続くと言う予報の六月。金曜の七時前。俺は会社を出て東京駅から新幹線に飛び乗った。向かうは軽井沢。スーツケースを置いて座席に座る。「はぁ……」なにに対してか、ため息が出る。ああ、きっとやりきれなさだ。売店で買った缶ビールを一口飲んでから暗闇に映る自分の顔を眺めた。とうとうあの二人は結婚か。緑の中のチャペルで純白に包まれる二人はどれほどに美しいのだろう。……ふんっ。まーたく興味はないけど。俺...

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第一章 蕩けるヴァニラ 1

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高層マンションの二十二階。三十帖ある部屋はフレンチバニラの甘く官能的な香りが漂い、柔らかなオレンジの灯りに照らされていた。照明はブラウンカラーの大理石の玄関から同じ色の廊下、廊下沿いの一つの部屋を含めたすべてが落とされている。暗くないのはカウンターと部屋中央のテーブルでアロマキャンドルが静かに焚かれているから。南と西に望めるはずの素晴らしい夜景は大きなシェードで遮られて、余計な音すらもしない……濡れ...

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蕩けるヴァニラ 2

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「こら、ダメじゃないか……今日は美咲から求めたらいけない日だろ。俺が祝う日なんだから」言いつつ男は出されている舌を亀頭で小突いた。さらに両胸でペニスをしごくような揉む動きも加える。女は男の身勝手な行為に更なる興奮を感じた。パックリと開かれ晒されている秘裂は、オイルよりも十分熱のある愛液を生み出している。祝ってもらっているのは間違いないようだ。男は物欲しげな舌を先端で小突いてもそれ以上のことを女にさせ...

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蕩けるヴァニラ 3

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瞼を上げた美咲に見えたのは精悍な顔の心配そうな表情だ。松永龍慈(まつながりゅうじ)はその表情を悟られないようにとすぐに頬を卑しく歪めた。縄の痕を心配して擦っていた美咲の手首からも手を離した。「良かったか?ぶっ飛んでたぞ」甘い香りは変わらず部屋を埋め尽くしている。それでも美咲は自由になった両手足よりも自分が放った臭いをまず感じた。「出ちゃった?」羞恥の色を含んだ掠れた声だ。松永はオーバーなくらいに片方...

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蕩けるヴァニラ 4

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次々と人を飲み込んでいく社員通用口を美咲も潜った。「おはようございます」「おはようございます」他の従業員と挨拶を交わして階段を下りていく。女子更衣室は地下二階。エレベーターを使わずに階段で下りるのが日々の日課になっていた。階段を下りきった途端に右端のエレベーターが開く。「ああっ、美咲ちゃん、おっはよ」狭い場所から一気に解放された群れの中で鼻にかかる甘ったるい声を上げたのは美咲が最も親しくしている速...

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蕩けるヴァニラ 5

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その日は松永が珍しく予約なく一人で食事に訪れた。服装はやはりビシッとした黒スーツ。初めて来店してから半年が経った頃、美咲が二十七歳になったばかりの時だった。「いらっしゃいませ。こんばんは。お一人なんて珍しいですね」美咲は言ってからおしぼりを置いた。すると松永は美咲を見ずに言った。「何時に終わる?」「はい?」「何時だ?この後予定でもあるのか?無理ならいい」訊いている割には断定しきっている早口な物言い...

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蕩けるヴァニラ 6

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「人見知りするタチでね。それなりに生きて来たくせに女性を悦ばす話題も良く解らないけど、時々会って欲しい。もちろん、お店の方は今まで通りに使わせてもらう」真っ直ぐなのに自信無げなセリフに美咲は「嬉しいです。是非、勉強させて下さい」と言葉を添えて微笑んだ。強面の顔がホッと緩む瞬間、不思議な愛しさを感じた。それからペースで言うと自分の店の外で月に二度ほど美咲は松永に会った。早番、遅番、やむなく通し、休日...

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蕩けるヴァニラ 7

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チェックインをしたのは純和風の旅館。それなのに畳廊下を歩いて通されたのはフローリングの洋室だった。窓の向こうには大きな露天風呂がある。「大浴場と貸切風呂もございますので、よろしければお入りください」案内した仲居は言った。食事は部屋ではなく食事処のようだ。松永は六時半に予約をした。仲居がいなくなってから松永は美咲に言った。「風呂に入ってくればいい。俺は構わないから。そうしたら夕飯を食べに行こう」「松...

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蕩けるヴァニラ 8

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食事は懐石のコースだった。松永と日本料理を食べるのは初めてだ。「いいですか?」という問いに対しての松永の頷きを見てから、美咲はお品書きを眺めては運ばれてきた食事を写真に撮って箸を付けた。「柊木さんはうさぎ、好きか?」松永は唐突に言った。茶わん蒸しに乗った雲丹をスプーンですくった時だった。「うさぎですか?飼ったことはありませんけど」「さっきの工房でうさぎのオブジェを頼もうと思うんだ。柊木さんに旅行の...

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蕩けるヴァニラ 9

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松永さん……それ。いまどき興味本位で入れる若者が多いだろうが部分的なものですら美咲には縁がなかった。好奇心だけなら描かれている絵を見てみたい。だけど、惹かれた男の背中一面にそれがあったら戸惑わないわけがない。ましてや美咲は男の背中というものに囚われた女だ。同じように松永の背中も大きくて頼もしい。真っ直ぐと伸びるスーツの後姿に幾度もしがみつきたいと思った。でも……美咲は背中を見つめたまま動けない。松永は...

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